NBSクバオ店
群を抜く規模とサービス
首都圏鉄道(MRT)のクバオ駅を降りてロハス通り沿いを徒歩五分。雑居ビルに挟まれ、書籍小売最大手「ナショナルブックストア(NBS)」のクバオ店がある。高さ約二十五メートル、六階建てのビルが丸ごと本屋である。一九八二年に開店、二十年の歳月を経て少々くすんでいる。しかし、フィリピンでは最大規模の売り場面積と充実したサービスを誇っている。
全国に広がるNBSの支店網の中で、同店は三番目のしにせ。正式名称は「スーパーブランチ」だ。約三千平方メートルの売り場に約三万冊の本が並ぶ。残念ながら日本語の本は扱っていないが、社会・人文科学、自然科学の専門書から、教科書、恋愛小説、絵本まで、フィリピンで入手可能な書籍はほぼそろっていると言えそうだ。
日本の紀伊國屋書店の新宿本店を思い出しながら中に入ってみた。一階は文房具など、二、三階で新刊書、四階は出版されて年月の経ったいわゆる「新古本」を扱っている。
同店の「目玉」は三階の検索サービス窓口だ。紙に書名と著者名を書き込み係員に手渡すとコンピューターで他店を含め在庫の有無を調べてくれる。書名などが完全でなくても、検索可能だ。また、電話や電子メールで在庫確認ができる。
同じ三階にはオープンスペースのカフェや珍しい輸入本の展示所が設けられている。カフェには四人がけの机が五台、展示所には六人がけのテーブルが二台が置かれ、持ち込んだ書籍を読むことができる。カフェは飲食物を注文することになっているが、勝手に座り込んでいる人も多い。
カフェで持ち込んだ専門書を読んでいた医学生、ジョアン・ラモス・ジュニアさん(27)。夏休みに入ってほぼ毎日、リサール州アンティポロ市の自宅から通っているという。午後一時から同八時までカフェで前学期の復習をしているそうで、「学校の図書室や自宅はどうしても邪魔される。ここならば誰にも気遣う必要がない。静かで冷房もよく効いているから集中できる」と話した。
また、専門書売り場にいたリアン・タネスさん(18)は電子工学専攻の学生。週に二回は来て専門書を読んでいる。「欲しい本はあるが、今は買わない。二ー五割は安くなる年に三回ぐらいあるセールの時を狙う」と苦笑いした。
開店した二十年前は他に類を見ない本屋として、「敵なし」の状態だった。だが現在、大型店が次々と出現し、厳しい競争にさらされ始めた。輸入本展示場は出版記念会や著者のサイン会などにも使われており、集客に努めているという。
店外からの検索サービスは電話(02・913・5279/5616)か電子メールbookfinder@nationalb
ookstore.com.phで受け付けている。(湯浅理)