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5月12日のまにら新聞から

リサール州カインタ町

[ 1006字|2002.5.12|社会 (society)|名所探訪 ]

ココナツ味もち菓子が名産

 首都圏に隣接するリサール州カインタ町。ここは、ココナツ風味のもち菓子づくりの町として知られている。スペイン植民地時代から住民は菓子づくりで生計をたてていたというから、歴史は古い。

 町の中心にある役場近くのマビニ通りに、もち菓子などの製菓業者が十軒ほど並ぶ。その一軒、「アルフェル菓子製造」を訪ねた。

 十二種類の伝統菓子を生産している工場に入ると、ココナツの甘い香りがほのかに漂う。十五人ほどの男性従業員が汗をかきながら仕事に精を出していた。だれもが上半身裸だ。

 製法は種類によって違うが、ココナツの果実を砂糖と煮込んだり、もち米と一緒に炊くのが基本工程だ。

 売れ筋商品の一つで、ちまきに似た「スーマン」はココナツミルクで炊いたもちをバナナの葉で包んで二時間ほど蒸した菓子。出来たてを食べると、もちに染み込んだバナナの葉の香りとココナツ風味が口に広がる。いかにも南国の味。 またココナツ味のもちケーキ「ビビンカ」やういろうの食感に似た「サピンサピン」、「クチンタ」はどれもがほどよい甘さで好評だ。

 経営者のアルフレド・ガルシアさん(54)は七年前に店を開いた。幼少のころ、祖母からもち菓子作りを教わって、自分でも作っていた妻(53)の勧めがきっかけだそうだ。元手は五十万ペソ。サウジアラビアで十三年間働いて貯めたお金だった。

 「菓子の町カインタで店は軌道に乗っており、妻を信じてよかった」と話す。

 カインタ町役場の市場監督者、ロメオ・アルガヨソさん(57)によると、現在、同町には家族経営を中心に五百余りの製菓業者がいるという。主な卸先は首都圏や同州アンティポロ市。早朝から小売り業者が買い求めに来るそうだ。

 同町は平地面積が四千三百ヘクタールと、同州で最も小さいため、昔から稲作など農業には不適だった。このため、スペイン植民地時代の一八〇〇年代からもち菓子づくりが住民の生計の糧になっていたらしい。

  同町では、毎年十一月三十日に「もち菓子(カカニン)フェスティバル」を開催。九八年からは製菓業者が共同で直径六メートルのジャンボ「ビビンカ」を作り、住民や観光客に振る舞い、菓子販売の振興を図っている。

 アルガヨソさんは「巨大ビビンカの記録をギネスブックに掲載してカインタの名前を世界に知らせたい。だけどギネスブックの審査員を招待する予算が町にないので実現は難しいかも」と笑った。(栗田珠希)

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