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6月4日のまにら新聞から

フィリピン人の悪夢

[ 683字|2001.6.4|社会 (society)|新聞論調 ]

アブサヤフの増殖

 アブサヤフが再び誘拐事件を引き起こした。再三にわたる政府の総攻撃宣言で彼らは壊滅へと向かっているはずだった。だが結局、それは国軍のリップサービスに過ぎなかった。

 今回の事件で再びフィリピンは世界の注目を集めている。しかも「考えられ得る最悪の形で」である。アブサヤフにとっては面目躍如たるものがあろう。彼らの回復力、最も困難な状況下で生き延び、勢力を拡張していく能力は賞賛に値すると言ってもよい。

 昨年の誘拐事件後、アブサヤフは国軍の攻勢にさらされ完全に壊滅状態、悪くても組織的な活動をできない状態に追い込まれていたはずだった。しかし、事実は違った。

 「せん滅せよ」と指示された国軍が任務を完遂していなかったことは明らかだ。国軍はアブサヤフのメンバーを最後の一人まで追いつめるという作業を怠った。もしそうしていたならば事件再発は防げ、彼らは追いつめられて降伏するか、テロ活動を放棄し「普通の生活」に戻るしか道はなかった。

 今回、国軍がアブサヤフ幹部を取り逃してしまえば、彼らはまたまた何百人、何千人もの新メンバーを得て増殖するだろう。そうなることはフィリピン人にとって悪夢である。フィリピンの全国民がアブサヤフの人質となるようなものだ。

 次ぎにアブサヤフはどこで誰を襲うのか。マニラ首都圏の遊園地、公園、動物園などで家族連れが標的になる可能性もある。白昼に上院議員や国軍幹部が誘拐されるかもしれない。今やこれらの危ぐはたんなる心配事ではなくなった。

 国軍が今回の事件でアブサヤフを文字通り完全壊滅へと追い込めなければ、危ぐはますます現実味を増してこよう。

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