タール山大規模噴火の恐れ 周辺住民に避難勧告
タール火山でさらに大きな噴火が起きる恐れ、火口から7キロ以内の住民に避難勧告
フィリピン火山地震研究所のソリドゥム所長は2日午後の記者会見で、1日午後3時すぎに小規模な水蒸気噴火が観測されたタール火山(バタンガス州、標高311メートル)について、今後さらに大規模な噴火が発生する恐れがあると述べた。同研究所は1日午後3時16分にマグマ水蒸気の噴出が観測されたと発表し、同火山の噴火警戒レベルを引き上げていた。同研究所は2日、タール火山の火口から7キロメートル以内の危険区域にいる住民に対して避難するよう勧告した。
同所長によると、タール火山では1日午後3時すぎの水蒸気噴火に続き、さらに4回の小規模な水蒸気噴出が観測されたという。同所長は「タール火山はすでに噴火したと言えるが、さらに大きな噴火が起きる可能性はある」と強調した。ただし、火山上部のマグマがすでに「ガス抜きされた」ことから「昨年1月中旬に起きたような大規模な噴火にはならないだろう」と解説している。
国家災害対策本部の2日午前11時発表によると、タール火山の周辺にあるバタンガス州ラウレル、タリサイ、バレテ各町の住民計344世帯、1499人がそれぞれの町やナスグブ町にある小学校などに設けられた避難所にすでに退避した。また、同州アゴンシリオとサントトマス各町の一部住民が避難したとの情報もある。
一方、国軍のアレバロ報道官も2日、タール火山の活発化で影響を受けているバタンガス州の各町に第2歩兵師団と空軍第730戦闘隊の要員らを派遣し、避難住民の支援のために配備したと発表した。
また、同州ナスグブ町にある歩兵師団基地に軍用トラックや要員らを待機させ、リパ市にあるフェルナンド空軍基地にも予備役らを含む災害対応チームを待機させるなど大規模な噴火に備えているという。
比火山地震研究所の2日午前8時発表によると、タール火山では24時間以内に火山性地震が29回観測され、二酸化硫黄の排出量も1日に計1万3287トンに達した。同研究所は1日午後3時すぎにタール火山の噴火警戒レベルを6段階で上から3番目にあたる「アラート3」(マグマの上昇が起き噴火につながる可能性がある)に1段階引き上げた。
タール火山は昨年1月12日に43年ぶりに火口から大規模な水蒸気噴火を起こし、同研究所が警戒レベルを「アラート2」に引き上げ、その後、同日中に「アラート4」まで引き上げた。
13日には溶岩の流出も見られるなどさらに活発化し、周辺住民数千人が避難したほか、首都圏でも降灰がみられ、マニラ空港の離着陸も一時禁止されるなど影響が広がった。
同火山はその後、小康状態を保っていたが、今月1日に再び水蒸気噴火が発生し、「アラート3」に引き上げられた。(澤田公伸)