台風ヨランダ(30号)
住宅移転事業での用地確保が難航。ラクソン復興担当、私有地強制買い上げの予算化を要望
台風ヨランダ(30号)被災地復興担当のラクソン大統領顧問は6日、住宅移転事業での用地確保が難航し、被災後6カ月を目前とした現在も「政府が計画している移転事業に必要な用地の約12%しか確保できていない」と明らかにした。移転事業を加速させるため、ラクソン顧問は同日までに、公有地活用に関する大統領宣言の発令と、私有地を政府が強制的に買い上げることも視野にいれた予算確保を、大統領府に要望した。
同顧問によると、政府は住民移転事業で21万6966棟分の用地確保を目指したが、現在まで確保できたのは全体の12%の2万6155棟分にすぎない。
住民移転事業での用地交渉の遅れは、国連やフィリピン赤十字からも、「復興の足かせ」になっているとして、これまで度々指摘されてきた。比政府は被災地の海岸から40メートル以内を「居住禁止区域」に設定したが、移転先の用地確保が進まないため、中長期的な計画は現在も不透明な状態にある。国連は2日付の被災地報告で、同区域に住み続けている被災者に対しても、雨期入りに備え早急な支援が必要と警告していた。
ラクソン顧問はまた、「復興には詳細な被災地の防災マップ作成が不可欠」と強調。科学技術、環境天然資源両省は情報を共有し、現行の防災マップの縮尺を5万分の1から1万分の1に拡大した新マップを作成中。完成したマップを参考にし、被災自治体が「安全」、「ハイリスク」、「規制」の各地区を設定する計画という。
政府は被災各州、主要自治体に復興計画の提出を求めている。現在までにビサヤ地方セブ、レイテ、ビリラン、サマール各州が提出済みという。
台風ヨランダの被災地復興で比政府は昨年12月、2017年までの4カ年で国家予算の15%に相当する総額3610億ペソを投じることを決定した。住宅とインフラ再建では、安全な場所への住民移転や強度確認など、防災、減災面を重視するとの方針を発表している。(鈴木貫太郎)