台風ヨランダ(30号)
国連が支援報告を公表、雨期入り前の住宅再建を加速することが重要だと訴え
国連人道問題調整事務所(OCHA)は5日までに、台風ヨランダ被災地の支援報告を公表した。国連は、被災6カ月を目前に控えた現在も、200万人以上の被災住民が、暴風雨など悪天候に耐えられない掘っ立て小屋や半壊した住宅に居住しているとして、雨期入り前に住宅再建を加速させることが重要だと訴えた。国連はまた、用地問題が足かせとなり、仮設住宅建設が遅れていると指摘した。フィリピン赤十字社も5日、首都圏マニラ市で記者会見し「今後も継続的な支援が必要」と呼び掛けた。
OCHAの2日付報告によると、被災地で約12万世帯の家屋が修理されたが、いまだ住宅の修復を要する被災住民は約37万世帯に上る。住宅面での支援から取り残された被災者総数は200万人以上になるという。
避難所についても、ビサヤ地方東サマール、サマール両州の沿岸部10町では、被災前に指定されていた634カ所の8%に当たる53カ所のみが使用可能で、残りは大規模な修復工事が必要な状態にある。
比政府は被災地の海岸から40メートル以内を「居住禁止区域」に設定したが、中長期的な移転計画は依然として不透明な状態。国連によると、台風シーズンに備え、同区域に建てた掘っ立て小屋をベニヤ板などで補強している被災住民もいる。国連は同区域に住み続けている被災者へも、雨期入りに備えた支援が必要と指摘した。
昨年11月から2014年10月までを対象期間とした国連の被災者支援事業への加盟各国からの支援金は5日現在、目標額7億8800万ドルの約56%に相当する4億4100万ドルとなった。
一方、比赤十字社のパン事務局長は5日午前の記者会見で、被災から約6カ月間で同社は、5万1334世帯の家屋を修復、再建したと明らかにした。居住禁止区域の住民の移転は、政府による土地確保が難航し、進捗(ちょく)率は芳しくないという。
赤十字の支援により、移転できた住民は420世帯のみで、同社が当初目標とした5千世帯の1割に満たない。パン事務局長は「孤島などの遠隔地では、まだ緊急物資の提供が必要な地区がある」と述べ、被災者の暮らし再建には継続的な支援が不可欠と訴えた。(鈴木貫太郎)