ビサヤ地方台風災害
比日の専門家が高潮の高さを実測。タクロバン市を襲った高潮は6.4メートル超
日本の公益社団法人、土木学会とフィリピン土木学会を中心とする学官民合同の調査チームが12日午後、台風ヨランダ(30号)襲来で甚大な被害を受けたビサヤ地方レイテ州タクロバン市に入り、タクロバン港の2カ所で高潮の実測値を測定した。その結果、痕跡と被災者の証言などから、高潮は少なくとも6・4メートルに達していたことが分かった。調査チーム団長の田島芳満・東京大学教授(社会基盤学)は「台風ヨランダによる高潮は、東京湾の堤防設計の想定よりも高かった」と話した。
調査チームが測量したのは、タクロバン港の管理事務所と、同港内にある技術教育技能開発局(TESDA)事務所の2カ所。1カ所目は管理事務所正面玄関付近の1階天井部分、2カ所目はTESDA事務所入り口付近の1階天井部分を基準点に測量した。
田島団長によると、東京湾の堤防は伊勢湾台風級の台風が満潮時に来襲した場合を想定し、3メートルの高潮に耐えられるよう設計されているが、「タクロバン港を襲った高潮は、この想定を上回っている」と説明した。
海抜が低い地域では、強風の影響で水位が上昇しやすく、タクロバン港付近はこの地形に当てはまる。田島教授らが訪比前に、標高や海抜など地形情報と気圧分布など観測データから台風襲来時の高潮の高さを推算した結果でも、タクロバン市付近の高潮は高さ5〜6メートルと出ていた。米国のメキシコ湾や日本の伊勢湾など、過去の大きな高潮被害も遠浅の地形が広がる湾内で起きている。
田島教授らの計算では、タクロバン市同様、壊滅的な被害を受けパロ、タナワン両町を襲った高潮の高さは、それぞれ4メートルと3メートル。調査チームは今後、3日間かけてサマール、東サマール両州各地や、レイテ州パロ、タナワン両町など海岸部で同様の測量を行う。
現地入りした合同調査チームは日本側6人、比側7人の計13人で構成されている、中心は比日の土木学会に属する研究者や専門家で、両国政府と民間コンサルタント会社の関係者らも加わっている。(鈴木貫太郎)