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11月16日のまにら新聞から

旅客輸送能力が8万人増 LRT1延伸線部分開通

[ 2347字|2024.11.16|経済 (economy) ]

LRT1カビテ延伸事業のフェーズ1(パラニャーケ市区間)が開通。16日から運行開始

LRT1延伸線フェーズ1開通式でスピーチするマルコス大統領=15日、首都圏パラニャーケ市ドクターサントス駅で竹下友章撮影

 首都圏パラニャーケ市ドクターサントス駅で15日、軽量高架鉄道(LRT)1号線カビテ延伸事業(フェーズ1区間)の開通式が行われた。現政権で初めて開通した鉄道プロジェクトとなり、開通式にはマルコス大統領、バウティスタ運輸相ら閣僚、JVエヘルシト上院議員ら同線の建設を推進した国会議員らが出席。新設5駅区間を試乗した。一般乗客向けの運行は16日から始まる。

 フェーズ1区間は、これまでのLRT1の南端駅だったパサイ市バクララン駅から南に6・5キロ。首都圏パラニャーケ市内に、レデンプトリスト―アセアナ駅、MIAロード駅、PITX駅、ニノイアキノ・アベニュー駅、ドクターサントス駅の5駅が新設された。PITX、ドクターサントス両駅ではバスやジプニーなど他の公共交通機関とも接続する。比運輸省の発表によると、同区間の完成で、1日の旅客輸送数が8万人増加し、パラニャーケ市からケソン市への移動時間が1時間削減される。

 LRT1延伸事業は、フェーズ2および3を通じ、首都圏ラスピニャス市、カビテ州バコオル市へと進展する計画だ。「クリスマス渋滞を前に早めのクリスマスプレゼントだ」とスピーチで喜びを表したバウティスタ運輸相は試乗後、残りのフェーズの実施見通しについて記者団に対し、「スケジュールはまだ固まっていないが、来年には敷設権問題を解決して着工する。遅くとも現政権内には完成する見込みだ」と語った。

 同事業は、LRT1を運営する比日合弁事業体ライトレール・マニラ・コーポレーション(LRMC)と運輸省の官民連携(PPP)、および国際協力機構(JICA)による円借款のハイブリッド形式で実施。円借款は、第四世代軽量電車30編成の調達、バクララン駅拡張工事、カビテ州の新サテライト車両基地の建設などに対し実施された。

 

 ▽40年目に父の業績継ぐ

 LRT1は故マルコス元大統領政権下の1984年に開通。その40周年に当たる今年、息子である現大統領が自政権で初めて開通を迎えた鉄道事業が、LRT1の延伸線となった。

 演説冒頭、マルコス大統領は「今回の延伸が実現したのは、40年前に一人の男が近代的な交通システムを構築するという野心的なビジョンを抱いたことに始まる」と強調。「当時この事業は時代を先取りしており、費用が過大で、技術的課題はわれわれの専門知識を超えていると批判された。しかし、万難を排し、起工から3年で開通させた。LRT1は、東南アジアで初の高速軽量鉄道システムとなった」と述べ、父の「遺産」をたたえた。

 一方、カビテ延伸事業については「エストラダ大統領の時代に始まり、アロヨ大統領、(ノイノイ)アキノ大統領、ドゥテルテ大統領そして私まで5政権にわたって取り組まれており、この進展は先人たちの努力と献身のおかげだ」と歴代大統領をたたえつつ、「私の政権で着手した鉄道事業も完成をみるのは後の政権かもしれない。鉄道事業には長期的ビジョンこそ重要だ」と強調した。

 さらにPPPと政府開発援助(ODA)のハイブリッドとなった今回の事業について、「運輸部門への外資を誘致するには、公共サービス法改正による鉄道事業への外資制限撤廃を活用する必要がある」と指摘した上で、「今回のハイブリッドモデルは将来の投資のひな形となる」と期待を寄せた。

 JICAフィリピン事務所の坂本威午所長は、4月にJICAと阪急電鉄がLRMCの株式譲渡を受ける契約を結び出資者となったことに触れ、「JICAはいまや、ODAの提供者というだけでなく、直接投資者となった。これは、比鉄道のさらなる強化と運用・保守を重視しているためだ」と強調。「日本の経験を活用し、比における安心で信頼できる鉄道網構築、都市交通近代化、モーダルシフト、住みよい都市開発を100%支援する」と請け負った。

 在比日本国大使館から遠藤和也大使の代理として登壇した二瓶大輔公使は、フェーズ3までの延伸事業の完成への支援を改めて約束。その上で、現政権の大規模インフラ建設政策「ビルド・ベター・モア」下のインフラ建設を引き続き「ODAを通じて協力する」と明言した。

 ▽雇用創出と貧困削減

 LRT1延伸事業の経済効果について、経済開発庁(NEDA)のバリサカン長官はまにら新聞に対し、「この事業は労働力の豊富なルソン南部と首都圏の接続性を高めるほか、渋滞を緩和し交通コストを下げ、さらには沿線地区への民間投資も誘致する。これは質の高い雇用の創出と貧困の削減に結びつく」と説明。「この勢いで政策を続ければ、28年までに貧困率1桁の目標を達成できる」と自信をみせた。その上で、「接続性の向上も重要だが、貧困層ほど大きなリスクを負っている自然災害に対する強靭(きょうじんせい)性強化のためのインフラ投資も必要だ」と指摘し、防災インフラと同時進行する重要性を強調した。

 開通式には、JICAと共にLRMCの出資者となった阪急電鉄から上村正美専務取締役が出席。6月にLRMCと技術協力覚書を締結した阪急によるLRT1運営改善の状況について、上村氏はまにら新聞に対し「現在は色々なオペレーション、サービス、技術的なことなどでアドバイスしている段階」と説明した上で、「ほかにも、収入をどう上げていくか、乗客をどう増やしていくか、沿線をどう開発していくかなど色々な課題がある。それを長年培ったノウハウを役立てられるようアドバイスしていきたい」と意気込みを語った。今後のフィリピン開発への長期的な関わりについては、「マニラ首都圏はとても活気のある都市。阪急としても、今後どのように関われるのか広く検討している」とした。(竹下友章)

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