VATゼロ対象を拡大 企業税制優遇改正法に署名
企業税制優遇法CREATE MOREに大統領が署名。輸出企業に対する以前のVATゼロレート適用が復活
マルコス大統領は11日、企業復興税優遇措置法改正法(CREATE MORE、共和国法12066号)に署名した。外国企業の懸案となっている輸出企業の仕入れに関する付加価値税(VAT)問題について、レクト財務相は声明で「輸出志向企業の国内調達にはゼロレートが適用される」と明言。VATゼロレートの適用対象について「(製品およびサービスの生産に)『直接かつ排他的に使用されるもの』から『直接帰すことができるもの』に拡大された」とし「これによって、ビル管理、財務相談、マーケティング、管理支援サービスなどもカバーされる」と説明した。VATの還付プロセスについても、必要書類を限定し、還付のタイムラインを明確化するなど手続きを簡素化する内容が盛り込まれた。
CREATE法(21年制定)に基づく徴税が始まった一昨年、施行規則が二転三転するなかで、以前VATが課されなかった経済特区内の物流企業を対象に国内調達に関するVATの納税通知が来るなどし混乱が発生。さらに、本来VAT還付が受けられるはずの輸出企業の還付申請が、内国歳入庁(BIR)の抵抗で阻害されてきたという長年の問題も合わせ、フィリピン日本商工会議所(JCCIPI)や日本政府は繰り返し比政府に問題への対応を要請していた。
経済特区を税制上の外国(分離関税地域)とみなし、特区外から特区内への製品・サービスの購入にVATを課さない「クロスボーダードクトリン」は、CREATE法施行後にBIRが通達レベルで無効を宣言していたが、同原則が有効だとする経済区庁(PEZA)・訟務長官室と見解が対立している。同原則が明確に復活するかどうかは、今後出される細則や通達などを注視する必要がありそうだ。
CREATE法によって設置された、税優遇措置再検討委員会(FIRB)に権限を集中する代わりに権限が制限されていたPEZAなどの投資誘致機関(IPA)のインセンティブ付与権限は再び強化された。IPAがインセンティブ付与できる案件の対象が投下資本10億ペソ未満から、150億ペソまで引き上げられた。
また、IPA登録企業の所得税は25%から20%に減税。そのほか、他国と比べても高い電力費への100%の控除、観光産業への投資に50%の追加控除も盛り込まれた。戦略的・高質投資を誘致するため、5%の特別法人所得税(SCIT)や追加控除制度(EDR)などインセンティブの適用期間は、最大17年から27年に延長された。
▽東南アジアで最も良い税制
署名式で大統領は「改正法策定において、ビジネスセクターの役割をいくら強調してもし過ぎることはない。民間企業からのフィードバックは、比が世界で本当の意味で競争力を持つ法律の策定において不可欠だった」と企業や企業団体の声を反映したことを強調。
PEZAのパンガ長官は「今回の法改正の重要な側面は、東南アジアの法人税において他の東南アジアと対等になったこと。さらに手厚くなった財政インセンティブと合わせると、フィリピンは東南アジアで最も気前の良い税制となった」と歓迎した。
CREATE法の改正を主導してきたズビリ上院議員(前議長)も声明を発表。「多くの大企業が何年もVATの還付を申請して受けられず、巨額の損失を出してきた」と指摘し、その上で「昨年日本を訪問した際には、日本の岸田前首相が直接この問題を持ち出した。それがこの問題に取り組む大きな動機となった」と明かした。(竹下友章)