ボラカイ島を環境先進地に 廃油をEトライシクル電源に利用 JICA事業
ボラカイ島で使用済み食用油を利用した電動トライシクル充電ステーションを設置
株式会社金沢エンジニアリングシステムズ=本社・石川県=と国際協力機構(JICA)は2日、観光名所として知られるアクラン州ボラカイ島で、使用済み食用油を再利用して発電する、電動トライシクル(バイクタクシー)向け充電ステーションの設置式を行った。同州マライ町および同町のバランガイ(最小行政区)ヤパックの関係者も出席した。
ボラカイ島では、推計月間3万リットル生じる調理用油の廃油のうち30%が未回収でそのまま下水に流され、観光資源である海を汚染しているという問題があった。さらに停電の頻発地でもあり、障害発生時の予備電源の確保が課題となっていたほか、最も人気のある砂浜の一つ、島北部のプカシェルビーチ行きの電動トライシクルは充電施設が限られていることから運行数に制約があった。
こうした開発課題に対し、金沢エンジニアリングシステムズは、同社が開発した未精製の使用済み食用油を既存のディーゼル発電機の代替燃料に加工する「レナジーシステム」の導入を提案。同地の開発課題に貢献するビジネスの「普及・実証事業」を2018年からJICA採択事業として実施してきた。
「レナジーシステム」は24時間365日稼働可能なため、災害時の非常用発電機用の燃料供給への活用も期待されている。
設置式に参加したJICAフィリピン事務所の坂本威午所長は、レナジーシステムの優位性について、「使用済み食用油の再利用には通常不純物の除去が必要だが、『レナジーシステム』は不純物を含んだ油を直接再利用できる独自技術。しかも、軽油を購入するより遥かに環境にやさしく安価だ」と説明。
使用済み食用油を、発電を通じて温暖効果ガスを排出しない電動トライシクルの動力に変換するすることを可能にする同システムが「環境問題への対処のブレイクスルーをもたらし、ボラカイ島が比における環境にやさしい観光地のモデルになると信じている」と期待を表した。
ボラカイ島は比の主要観光地の一つだが、近年、海洋汚染など環境問題が深刻化。
ドゥテルテ前政権では2018年4月に半年間の閉鎖を命じ海水の浄化作戦を行うという強硬策もとられた。「成長けん引産業としての観光開発」と「環境配慮型の持続可能な成長」を優先課題に掲げる現政権にとってもシンボリックな観光地の一つとなっている。(竹下友章)