通信、鉄道など外資規制撤廃へ 公共サービス法改正法両院案が承認
通信や鉄道などへの外資規制を撤廃する「公共サービス法改正法」の両院協議会案を両院が承認
上下両院は2日、「公共サービス」の定義を5事業に限定することで、通信や鉄道など一部公共サービス部門への外資規制を撤廃する「公共サービス法改正法」の両院協議会案をそれぞれ承認した。大統領の署名を経て発効すれば、海外からの直接投資が5年間で2990億ペソ増加することが見込まれるほか、経済成長率を0.47ポイント底上げするとの試算がなされている。
3日の英字紙ビジネスミラーなどによると、改正によって外資規制対象となる公共サービス事業は①送電・配電事業②石油・石油製品のパイプライン輸送事業③上水道の配水・送水事業および下水道事業④港湾事業⑤路上旅客運送事業――の5事業に限定される。
5事業以外の通信事業、空港、鉄道、高速道路、有料道路、海上輸送などの事業は「公共サービス」に該当しなくなり、公益事業の国内資本比率を「60%以上」と義務付ける1987年憲法12条11項規定の対象外となる。
上院法案(第2094号)の旗振り役を務めた上院公共サービス委員会グレース・ポー委員長=無所属=は、同改正法について「コロナ禍からの経済回復だけでなく、外資誘致で近隣諸国に遅れを取っていた比に競争力を与える」とコメント。
「われわれの目的は競争の促進を通じてサービスの質向上を促し、雇用を創出することだ。本改正は包摂的な経済開発の嚆矢(こうし)となる」とし、さらなる市場指向の制度改革を推し進める決意を語った。
下院法案(第78号)の起草者である下院歳入委員会のジョーイ・サルセダ委員長=最大与党・PDPラバン所属=は、同改正法を「21年制定の税制改革法第2弾企業復興税優遇措置法(CREATE)に並ぶ経済改革だ」とし重要性を強調。
「国内の優秀な人材が海外に流出していた要因は、彼らを雇用する資本が国内に不足していたからだ」とし、同改正法による投資促進が頭脳流出(ブレインドレイン)の抑制にも貢献すると指摘した。
フィリピン日本人商工会議所も加盟する外国人商工会議所連合(JFC)は3日に声明を発表。「シンガポール、タイ、ベトナム、インドネシアの政策とも一致し、東南アジア諸国連合の包括的投資協定に沿っている」とし、比が東南アジアのスタンダードに追いついた点を高く評価した。
その上で、昨年制定された小売自由化法改正法、両院で承認されている外国投資法改正法案と共に、公共サービス法改正法案は比経済改革の「ランドマークとなる」とし、今会期内での制定に期待を寄せた。
改正される公共サービス法は、独立準備政府(コモンウェルス)時代の1936年に制定され、85年の歴史を持つ。(竹下友章)