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8月31日のまにら新聞から

12年後は「危機的水準」 比でも進む農家減少・高齢化

[ 872字|2021.8.31|経済 (economy) ]

ダール農務相「農家の減少が続いており、12年後比の農業は危機的状況に」

フィリピンの農業就業者推移

 ダール農務相はこのほど、デラサール大の法学専攻学生団体主催の会議で「農業従事者の減少が続いており、このままでは12年後比の農業は危機的状況に陥る」と警鐘を鳴らした。比では2018年現在の農業就業者の平均年齢は57歳に達しているとされ、高齢化が進行している。

 農務相は27日の会議で「農業部門には教育水準が高く才能ある若い人材が必要だ」と指摘、「農務相として、農業近代化をもたらすリーダーとなる機会を提供したい」とし、18歳から30歳の農業起業家を対象とした5年間で最大50万ペソの無利子融資プログラム「KAYA」を学生らに紹介した。

 統計庁によると、労働力に占める農業就業者の割合は2010〜19年までの10年で30・8%から21・7%に減少。構成比だけでなく絶対数も減っており、2010年に1196万人いた農業就業者は2019年には972万人となった。10年間減少率は18・7%、減少幅は255万人。一方で総労働力は同期間、人口増加に伴い579万人増加している。

 また国内総生産(GDP)から見ると、2000年にはGDPの19・8%を占めていた農業は2010年には11・4%とほぼ半減。2019年には9・2%と1割を切っている。過去5年間では構成比だけでなく絶対額も減少傾向にあり、14年の322・4億ドルをピークに19年は300億ドルに減少している。

 労働者1人当たりの産出付加価値では、19年は全産業の平均8041ドルに対し、農業は3087ドルと平均の4割程度の水準。この格差は20年間改善されていない。これは所得格差につながり、農業部門から労働流出要因ともなる。

 フィリピン大ロスバニョス校のパリス教授の調査によると、1966年に46歳だった農業就業者の平均年齢は2011年には53歳に上昇。農務省は、18年には57歳に達したと報告している。

 同省は「若者の農業離れ」が進んでいると指摘しており、実家の農業を継がず、都市部に労働者として流れ込む若者が増えたことが、農業高齢化を招いているとみられる。(竹下友章)

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