昨年の総労働時間13.6%減 比はASEANでワースト1
ILOによると、昨年の比の労働時間は13.6%減でASEANワースト1
国際労働機関(ILO)は13日、新型コロナの東南アジア諸国連合(ASEAN)労働市場への影響に関する最新の報告書を公表した。2019年と比較した昨年の比の総労働時間は13・6%減とASEAN平均8・4%減を大きく下回り、同地域ワーストとなった。
また、コロナ対策財政支援額の国内総生産(GDP)比も平均を大きく下回り、ASEAN平均15・7%に対し、比は8・6%だった。最も高かったのはシンガポールの30・5%で、次いでマレーシア30・1%、タイ19・4%、インドネシア11・4%、カンボジア8・4%などの順。
総労働時間の減少率は国別の差が大きく、タイ、ブルネイ、ラオスは4・3〜4・5%減と相対的に軽微だった。差が生じた要因についてILOのバイジェラン氏は、防疫規制の厳しさを一因として指摘。「比は最も厳しい防疫措置をとった国の1つ。それも影響している」と説明した。同レポートは他の要因として、コロナの影響を受けやすい観光関連産業への依存度など経済構造の違いも挙げている。
今年第1、第2四半期のASEANの総労働時間は、2019年第4四半期と比べそれぞれ6・1、6・2%の減少。最も楽観的な予測でも2022年までコロナ以前の水準に回復しないという結果となった。
同地域における昨年の失業率は、コロナ禍が発生しなかった場合の推計失業率より、男性が2・7ポイント、女性が3・9ポイント、若年層が6・7ポイント低く、若年雇用に特にしわ寄せが来ていることが明らかとなった。
就業機会が失われたことによって雇用者報酬も減少。2020年のASEANの雇用者報酬は前年比で7・8%減り、約1000億ドル、域内GDP3・3%相当の所得が失われた。
バイジェラン氏はこうした失業・未就労の長期的影響を懸念。「仕事から離れる時間が長期化するほど将来へ悪影響する。スキルが落ち、将来の職業の質と賃金の低下というかたちで問題は顕在化するだろう」と指摘し、政府による能力開発投資や中小企業支援の重要性を訴えた。(竹下友章)