新規鉱山開発凍結を解除 鉱山政策を9年ぶり転換
ドゥテルテ大統領が、9年前の新規鉱山開発事業凍結を撤回
ドゥテルテ大統領は14日、アキノ政権下の2012年に施行された大統領令第79号の一部条項を撤廃し、新規鉱山開発の凍結を9年ぶりに解除する大統領令第130号に署名した。コロナ禍による経済低迷から脱却するためにも新規の鉱山開発権を付与できるよう、鉱山業界や環境天然資源省鉱山地質学局などがこれまで訴えてきており、大統領のお墨付きを得た形だ。16日付英字紙スターが報じた。
モンカノ鉱山地質学局長はインタビューに対し「すでに複数の新規鉱山開発計画が優先リストとして作成されていたが、鉱物生産分与契約(MPSA)の執行が大統領令第79号によって凍結されていたため実施に移せなかった」と述べ、新規鉱山事業が再開される見通しとなったことを歓迎した。同局長によると比の鉱山開発はまだ採掘可能鉱物資源の5%未満しか利用できておらず、開発促進による経済利益は大きいとしている。
大統領令第130号では新規鉱山開発事業の認可付与に加え、既存の鉱山開発権やMPSAの条項見直しも行うと規定されており、国内ですでに操業中の鉱山開発事業にも影響を与えそうだ。大統領令では環境天然資源省に対し、政府の収入やロイヤルティなどが最大限確保できるよう鉱物資源埋蔵地区の指定を含めた生産分与契約の見直しを命じているためだ。
今回の大統領令を受けて、鉱山経営者団体のフィリピン鉱山会議所(COMP)は「業界の発展を阻害してきた政策が撤回されることで国内外からの比への投資が増える」と歓迎する声明を出した。同会議所はコミュニティーや環境に対する鉱山の悪影響を軽減するための法律や規則がすでに制定されているほか、責任ある資源開発を促進する地球規模の取り組みも採用するなど、鉱山企業の努力にも目を向けるよう訴えた。
一方、環境保護団体「鉱山廃止連合」(ATM)は、大統領令について「フィリピン人の未来の世代に対する裏切りだ」との声明を出した。同団体は「ドゥテルテ大統領は、環境保護を訴え森林破壊を止める政策から鉱山開発志向へと方向転換した」と批判した上で、今後、連合に加盟している団体と共闘して反対運動を強化するとの姿勢を示した。(澤田公伸)