黒字企業43%に減少 比進出133社 21年見通し
JETRO調査で比の日系企業のうち営業黒字見通しは43%にとどまる
日本貿易振興機構(JETRO)の2020年アジア・オセアニア進出日系企業実態調査によると、コロナ禍の影響を受けて20年の営業利益見込みを「黒字」とした企業の割合は48・9%で、19年調査時の65・5%から16・6%減少した。フィリピン進出企業に限ると、「黒字」の見通しは42・9%と前回の69%から減少、「赤字」見通しは35%で前回の11%から大幅に増え、収益の悪化がアジア・オセアニア地域諸国の中でも深刻な様子が明らかになった。
調査は今年8〜9月にかけて北東アジア5カ国・地域、東南アジア諸国連合9カ国、南西アジア4カ国、オセアニア2カ国の計20カ国・地域に進出する日系企業を対象に行われ、 23日に報告書が発表された。5976社から有効回答を得ており、このうち比進出企業は製造業59社と非製造業74社の133社。
比の収益黒字化予想の42・9%は、東南アジア諸国連合の9カ国の中ではシンガポール(50・5%)、マレーシア(50・0%)、ベトナム(49・6%)に次いで4番目で、タイ(40・7%)やインドネシア(37・1%)の予想よりも上回っている。
▽事業拡大は34%
今後1〜2年に事業を拡大すると答えた比の企業は、昨年調査時の52%から34%に減少し、現状維持が45%から57%に、縮小も3%から8%に増加した。
新型コロナウイルスの影響からビジネスが回復する時期については39%が21年後半、29%が21年前半、15%が22年以降と回答、全体の54%が回復時期を来年後半から2年後までと予想していることが分かった。しかも、回復後の市場はコロナ流行前と同じか、やや減少するとみる企業が約8割を占めた。
比での経営上の問題点については、取引先からの発注量減少、新規顧客開拓の停滞、税務の負担、ペソの対ドルレート、従業員のスキルや能力の低下、通関に時間を要すること、などが挙げられている。
▽現地調達など課題
製造企業などからは、現地企業からの調達比率を上げているものの、原材料・部品を供給する比国内の会社が少ないため輸入せざるを得ないことや、比の国際競争力が若干低下しており、自社内のコスト削減も限界に近づきつつあるとの意見も寄せられている。
JETROマニラ事務所の石原孝志所長は「他のASEAN主要国に比べて比の投資環境の優れているところは、国際競争力のある賃金と現在の税制インセンティブにある」とした上で「高額な電気代や脆弱な通信事情などのインフラ問題、原材料や部品の現地調達の難しさ、許認可や税務等の煩雑な手続き、台風や噴火などの自然災害を比投資環境のリスクとして指摘する企業が多かった」と比企業の反応を総括している。(澤田公伸)