マルコス人気の影(上)
[ 1798字|社会 (society) ] 有料独裁政権による拷問が残した傷痕を取材。薄れる記憶にため息漏らす犠牲者たち
マルコス政権が打倒されたエドサ革命から今年で30年。戒厳令布告から約14年に及ぶ独裁政権下では、腐敗した権力が自由・人権を踏みにじった。民主主義社会への希求がエドサ革命を生み、誰もが「新時代の到来」に期待した。しかし、貧困、犯罪、汚職などフィリピンが抱える根深い問題は歴代の政権に共通課題として受け継がれ、現在まで抜本的な解決への道筋が見えない。国民の鬱憤(うっぷん)を反映したか、2016年の正・副大統領選を前に、故フェルディナンド・マルコス元大統領の息子マルコス上院議員の支持率が上昇するなど、独裁者一族を受け入れる動きが顕著になり始めている。マルコス独裁政権下の当時を知る有識者や拷問を体験した犠牲者、マルコス支持者などを取材し、独裁政権の悪行や、マルコス人気の陰に潜む時代の流れに迫った。