日系企業 悩みは後任のビザ 「交代できない」例続出
人事発令後、1年近くたっても後任が来られず、比にとどまっている駐在員も
在フィリピン日系企業の間では、比で任期を終えても後任のビザが出ないため、事実上、人事が凍結される例が続出している。中には人事発令後、1年近くたっても後任と交代できないまま比にとどまっている駐在員もいる。比政府は有効なビザを既に持つ外国人の再入国規制は順次緩和しているが、新規入国については複雑な手続きをなお課しており、ビザ発給数を絞っているともみられる。在比日本大使館は日系企業の新規入国者について「さまざまなルートで働きかけを続けている」としているが、春の人事異動期を前に新規入国が困難な状況は当面続きそうだ。
外国企業からの新規入国者のビザ申請の現状は(1)必要書類を貿易産業省など業種に関連する省に提出、次官以上の署名入り推薦状を得る(2)その推薦状を元に比外務省が在京フィリピン大使館に伝え申請者を入国審査免除の対象とする(3)その後に申請者が「9a」など短期滞在用のビザ発行を受ける──という手順となっている。比に入国さえできれば、ビザは一般駐在員向けの「9g」など長期ビザへの変更も可能とされている。
しかし、新規入国の申請が外国企業から殺到して処理が追いつかないのか、比側が数を絞っているのか、申請から発給まで数カ月はかかっているのが現状だ。
フィリピン日本人商工会議所の藤井伸夫副会頭によると、業種によっても新規入国者のビザが出るまでの期間に差があるという。「銀行の場合は監督官庁が独立性の高い中央銀行になるので、速やかにビザ発給に至る例が多い。商社も比にとって『国家的重要プロジェクト』とされるインフラ事業などにかかわっている場合はビザが出やすい」と藤井副会頭は話す。
一方、それ以外では日本で知名度が高い大手企業であっても「後任のビザで苦労している会社は多い」と指摘する。日系大手保険会社の例では、フィリピンとインド間で人員を入れ替える人事が昨年4月に発令されながら、新規入国ビザ取得がいずれの国でも難航、現在も異動ができていないという。
在比日本大使館は「比外務省をはじめさまざまな官庁に新規入国についても緩和するようお願いしている。ただ、お互いの国の感染状況などが絡むため、交渉には難しい面もある」とした上で「新規入国に関する一般的な相談は経済班や領事班で受け付けている」と話している。(石山永一郎)