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1月5日のまにら新聞から

シーレーン確保へ法案 対中関係の火種にも

[ 1531字|2021.1.5|政治 ]
異例の元日の本会議のため、米連邦議会議事堂に入る共和党のマコネル上院院内総務=1日、米ワシントン(AFP時事)

 フィリピン周辺海域にシーレーンを確保する法案が議会下院で審議されていることが4日、分かった。シーレーンは国の通商や戦略上、重要な価値を持ち、有事の際には確保すべき海上交通路で、比の排他的経済水域(EEZ)も含まれる。法案が成立・施行されれば、南シナ海で領有権を争う中国との関係で新たな火種になる可能性がある。

 ▽漁船への妨害禁止

 4日付英字紙マニラタイムズによると、「比群島シーレーン法案(下院法案第8018号)」は海の憲法とも言われる国連海洋法条約(UNCLOS)に基づく内容で、ルイスレイムンド・ビリャフエルテ議員(南カマリネス州2区選出)が昨年11月17日に提出。同23日に下院外務委員会に回されていた。中国の南シナ海への進出や、米軍の「航行の自由作戦」強化に伴う南シナ海での米中の緊張の高まりも受けた対応とみられる。

 法案はEEZ内のシーレーンについて、第8条で漁船を含む外国船が、比の漁業活動を妨害したり、比の海洋資源を搾取することを禁止している。第6条でシーレーンを通航する外国の船と航空機の義務を列挙し、第11条で比水域における外国船の廃棄物投棄を禁止。第13条では外務省が主管し、法の規定を実施するとしている。

 ビリャフエルテ議員は「シーレーンに関連するこれまでの法律は細分化され、UNCLOS第53条で規定されているようなシーレーンを確立できなかった」と述べている。

 ▽国防権限法 再可決

 一方、米ワシントンの連邦議会上院の本会議が異例の元日に開かれ、トランプ大統領の拒否権行使により審議差し戻しになっていた国防権限法が可決された。

 3日付英字紙マニラブレティンに掲載されたAFP電などによると、トランプ大統領は「法案は国家安全保障に重要な条項を含んでおらず、外交面で米国第一を進めようとする政権の努力に反する」として、昨年12月下旬に拒否権を発動した。

 しかし、議会は修正に応じず、下院に続いて、共和党が優位の上院でも賛成81、反対13の大差で再可決した。

 ▽レームダック

 国防権限法は2021会計年度の国防予算の大枠を7405億ドル(約76兆円)と定めたほか、トランプ大統領が目指すドイツやアフガニスタンからの米軍撤収を事実上阻止した。4年間のトランプ政権下で拒否権が覆されたのは初めてで、トランプ大統領のレームダック(死に体)ぶりが歴然と表れただけでなく、米大統領が民主党のバイデン氏に交代しても、米国防政策に大きな変更はないことを予感させる出来事になった。

 ドゥテルテ大統領とトランプ氏は、オバマ前大統領と比べれば、友好的な関係を築いていた。初の首脳会談で人権問題はほとんど議題に上らず、トランプ氏が「素晴らしい関係にある」と発言したと報じられた。昨年2月のVFA破棄の通告時にも、米国の国防長官らが「間違っている」と強くけん制したのに対し、トランプ氏は「気にしない。金を節約できて大変結構だ」と述べていた。

 ▽MDT、EDCA

 ドゥテルテ大統領は今のところ、比米同盟の柱である比米相互防衛条約(MDT、本紙12月28日付に全文)や防衛強化協力協定(EDCA、本紙4日付に全文)については特に言及しておらず、同盟相手の米国が頼りにならないとみていても、どこまで条約や協定破棄へ突き進もうとしているのかは不透明だ。

 しかし、もしVFA破棄だけでなく、MDTやEDCAの見直しにまで踏み込もうと考えているならば、「米国第一」を掲げてドイツやアフガニスタンからの米軍撤収を目指してきたトランプ氏の方が、バイデン氏より、その交渉ははるかにやりやすかったはずだ。(谷啓之)

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