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食堂アンボス・ムンドス

2007/4/1 社会

創業120年、老舗の味守る

 スペイン植民地時代の初期からチャイナタウンとして盛衰の歴史を残す首都圏マニラ市サンタクルス。中華料理店が多いフロレンティーノ・トーレス通りにスペインの香りが漂う大衆レストランがある。その名は「アンボス・ムンドス」。「二つの世界」という意味のスペイン語で、東洋と西洋を結ぶフィリピンの食文化を表現するかのよう。

 米西戦争から十年前の一九八八年創業で、マニラ首都圏で最古のレストランといわれる。創業者のドーメン・デレオン氏はスペイン移民の父と比人母の間に生まれ、自身のルーツである「二つの世界」を融合しようと開業したと伝えられる。

 店先に並べられた植木の向こうでは、女性店員が炭火でフィリピン風パンケーキ「ビビンカ」を忙しそうに焼いている。店に入るとメニューが黒板にチョークで書かれ、レトロな親しみを感じさせる。

 創業以来、守っている代表的メニューはカレカレやタパン・バカ(ビーフタパ)など比の家庭料理、これにパエリアや牛タンのトマト煮込みなどスペイン料理が加わる。

 経営者が二代目、三代目と変わりながら、次第に「マニラを代表する老舗レストラン」としての地位を築いた。同地区が丸焼けになった太平洋戦争のマニラ攻防戦でも命脈を保った。

 しかし、食堂の運命も人生と同じで危機は訪れる。一九八〇年代後半、ファストフード店が普及する中で、大黒柱の三代目店主が他界。さらに火事で店舗が全焼という災難に遭った。老舗の土台は大きく傾いた。

 四代目の現店主、グレゴリオ・ゴウディネスさん(44)は「兄がカナダに移住していた。経営も圧迫されてカナダ移住が最良の選択だと思った」と振り返る。地域とともに歩んで来た父祖の店を捨てるのは断腸の思いだったが、経営悪化が廃業の決断を迫った。

 九三年、廃業して兄を追うようにカナダに移住。マニトバ州ウィニペグ市を皮切りに転々と職場を移りながら生活の再建を図った。三年後には西海岸バンクーバー市に移っていたが、定職に就けていなかった。

 「これが自分の選択した生活か」??自問したグレゴリオさんは九七年に帰国を決心した。「(故国には)老舗の復活を望む声もあった。自分にも老舗が姿を消して良いのかという思いがあった」と、当時の心境を語った。

 三代目時代の常連客が開店をいろいろ手伝ってくれた。メディアも「老舗復活」を取り上げた。「レストランを愛する人たちがこんなにいてくれたのか」??グレゴリオさんは本当にありがたいと思ったという。

 料理はあくまでも手作りにこだわる。自慢のカレカレ(二百五十ペソ)には、ピーナツを時間をかけてつぶして作ったソースを使う。父から既製品は極力使わない経営方針を受け継いだ。

 妻キャサリンさん(42)は道向かいの有名広東料理店「ワースン」(一九五五年開店)の長女だ。お互いに「老舗の重みは分かっている」同士が結婚した。二人で「伝統を維持しながら同時代性を出していきたい」と励んでいる。両店で互いのメニューを注文できるようにした。客は「二つの世界」の味を楽しめる。

 「速さ、安さ」を売り物にするファストフード店の時代だ。しかしグレゴリオさんは「彼らが出せない、人間的で懐かしい料理を出していきたい」と言う。そこに創業百二十年の老舗の自信が見える。(藤岡順吉)

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