ハロハロ
タクシーに乗ると、運転手と必ず話をする。先方は長時間勤務や渋滞やらで退屈しているから、問わず語りでよくしゃべる。時節柄、話題は政治になる。「政治」とは言っても「アロヨ大統領は嫌いだ」「エストラダ前大統領の方がなんぼか良かった」など愚痴に毛の生えたたぐいの話だが、比の庶民感情が少しは分かる。
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愚痴の向こう側には、大統領の美辞麗句とは裏腹に、いっこうに上向かない日々の暮らしがある。だから、政治話の次には必ず「ガソリン代の値上がりで手取りが減り、女房がうるさい」と正真正銘の愚痴が続く。一九八六年のアキノ政変では、こんな愚痴が政権への憤りに転じて「ピープルパワー」を生んだと思う。
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七月に続いた政治集会。与野党とも市民を大量動員して「ピープルパワー」を演出した。しかし、報酬目的の参加者も少なくなく、地元テレビ局は「集会でばらまかれる金はもともと国民の金。もらって当然」という参加者の声を紹介していた。庶民の愚痴は十九年前とさほど変わらないだろうが、憤りはもはやあきらめの域へ達したか。 (酒)