台風ヨランダ(30号)
被災地生活再建の「即戦力」に日本の中古漁船、耕運機。佐賀のNPOが寄贈
太平洋戦争中、フィリピンなどで戦死した旧日本兵の遺骨収容と慰霊を続ける日本の特定非営利活動法人(NPO)「戦没者追悼と平和の会」(塩川正隆理事長、佐賀県みやき町)がこのほど、中古の耕運機や小型漁船を、日本から台風ヨランダ(30号)被災地レイテ州へ贈る運動を始めた。同州の主産業、農漁業に必要な「即戦力」を提供することで、被災住民の生活再建を支える試み。後継者不足で使われなくなった農機などを有効活用することもでき、耕運機については今後5年間で100台の寄贈を目指す。
台風で甚大な被害を受けたレイテ州は、戦争末期の激戦地。1944年10月の連合軍上陸から約2カ月間続いた戦闘で、旧日本兵7万9千人、連合軍兵士約3500人が戦死、住民多数も巻き添えになった。塩川理事長の叔父清隆さんも、旧日本軍玉砕の地となった同州西部カンギポット山で亡くなった。
「戦争中、大変な迷惑を被ったにもかかわらず、地元住民は(日本側遺族らの)慰霊に協力してくれる。恩返しを」との思いから、台風被災から約4カ月後の3月、「追悼と平和の会」は日本国内で募った寄付金180万円でココナツの苗1万本を購入、カンギポット山周辺などかつての戦場に植樹した。
しかし、これらのココナツが収穫できるのは10年後。「住民の生活に役立つと思って、ココナツの苗を贈ったが、収穫まで時間がかかる。被災者に対する公的支援の打ち切りが近づく中、生計支援に結び付く即戦力が必要と思った」と塩川理事長。
今回、レイテ州に贈られた「即戦力」の第1陣は、中古の漁船2隻、耕運機7台、オートバイ3台、耕運機用スペアタイヤ20本など。被災住民のニーズを考慮して、生活再建に役立つアイテムを選んだ。いずれも日本国内で無償提供され、福岡県博多港〜レイテ州タクロバン港の輸送料約30万円は同会が負担した。
これらを積み込んだコンテナは3日、博多港を出て、7月中旬にセブ港を経由してタクロバン市まで運ばれる予定。出港前の1日には、塩川理事長がレイテ州庁舎を訪れ、ペティリア知事に寄贈品や目的について直接説明した。
中古耕運機を中心にした第2陣は8月中に手配する予定。塩川理事長は「レイテ州は日本人にとって特別な場所。私たちが(日本とレイテの)橋渡しをし、日本国内で使われなくなった農機などを贈り続けたい。耕運機は今後5年間で100台を目指し、操作に不慣れな農民らを対象に講習会も開く」と話している。(酒井善彦)