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4月17日のまにら新聞から

共感に基づいた支援を 現金給付策の問題点

[ 763字|2020.4.17|社会 (society)|新聞論調 ]

 防疫強化措置によって影響を受けたマニラ首都圏を含むルソン島の貧困世帯に対し、政府が2千億ペソの現金給付を決めたのは適切だった。しかし、二つの問題がある。

 第一は、給付の対象者が限られている点だ。世帯当たり5千〜8千ペソの給付にあたっては、社会福祉開発省が主たる監督官庁となる。地方自治体の関与は、内務自治省の監督の元で給付作業を補助するのみだ。自治体職員が受益者を自由に選ぶことを阻むためである。給付を受ける世帯は、バランガイ(最小行政区)が一軒ずつ申請書に記入して登録される必要がある。そのうえで社会福祉開発省が給付の可否を審査するという。問題は、同省が申請書の数を制限するため、申請書を受け取れない貧困世帯が出てくることだ。怒りの矛先はバランガイ職員に向く。実際にナタで脅されたバランガイ議長もいるという。明確な指針がないまま発表がなされ、混乱や怒りを招いているのは、これまでの政府の支援事業と変わらない。

 第二の問題は、中間層への支援がないことである。月収が貧困ラインの1万481ペソ以上であれば中間層とされている。蓄えがあってもすぐに底をつく人が多いだろう。最近になってようやく、政府高官は、中間層への支援の必要性を認識しつつある。中間層が有権者の7割を占めるために無視できないという政治的判断からのようだが。

 コロナ危機の長期化が予想されるなか、政府は、国債の発行や国有企業からの送金などによる6440億ペソの拠出を提案している。さらに、国会議員に割り当てられる優先開発補助金(ポークバレル)や、インフラ開発計画「ビルド・ビルド・ビルド」の見直しを検討してもよいだろう。危機には創造性や効率が試される。しかし、同様に重要なのは、影響を受けた市民への共感だ。(15日・ブレティン、ジェジョマール・ビナイ)

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