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3月13日のまにら新聞から

割り当て制で増える不当逮捕 警官の質落とす国警のシステム

[ 788字|2020.3.13|社会 (society)|新聞論調 ]

 政府は、警察からならず者を一掃する代わりに、立派な警官たちをゴロツキに変えてしまっている。これは、毎週決められた人数以上の逮捕件数を各警官に課すクオータ(ノルマ、割り当て)システムによる影響だ。もし逮捕件数の「ノルマ」を達成できなければ、その警官は「マヒナ(タガログ語で『意気地なし』)」とけなされたり、降格されたりする。

 アルバヤルデ前国家警察長官は、クオータの存在は否定したものの、警官は違法薬物戦争の「成果」を出すよう絶えず「プレッシャー」を与えられていると認めた。大統領府麻薬取締委員会のアキノ局長は2017年、各地域の責任者に月30〜40件にのぼる違法薬物関係者の逮捕ノルマを押し付けていたと認めている。

 ドゥテルテ大統領の血なまぐさい麻薬撲滅戦争の恐怖により、犯罪はより分かりにくく行われるようになった。警官は犯罪者を見つけるのに苦労し、注意深く証拠を集めることも、被疑者の人権を尊重することもしなくなった。さらにはでっち上げの罪で無実の市民が逮捕される破滅的な状況になっている。

 まともな警官たちは、保身や昇進を求める上司が、望ましい成果を得るために自分たちを悪用していると怒る。加えて、このクオータシステムが違法ギャンブルや武器の違法所持などにも拡大されてきたため、事態は悪化するばかりだ。

 でっち上げで逮捕した場合は、法廷で却下されるが、警察はおかまいなし。逮捕件数だけが大事なのだ。警察の成果のために人々が犠牲になるとはおぞましい限りである。

 アロヨ政権時代、その残忍さから「殺人者」と呼ばれた国軍のパルパラン将軍は、アロヨ大統領に称賛され、のちに下院議員にもなった。しかし現在は、誘拐や違法な拘禁の罪で服役中だ。同将軍の運命は、昨今のならず者警官たちへの警告に思えてならない。(9日・インクワイアラー、ジョエル・ルイス・ブトゥヤン)

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