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1月25日のまにら新聞から

富豪より公平な世界に関心を ヘンリー・シー氏の死去

[ 775字|2019.1.25|社会|新聞論調 ]

 実業家ヘンリー・シー氏が死去したニュースは二つの違った悲嘆の声を巻き起こした。まずは貧困から自らの手ではい上がり、フィリピン人の夢を体現した男としての長く生産的な生涯の終わりを嘆くという声である。起業家精神を発揮し小さな店からモールや不動産開発企業を育て上げた実績を持ちながら、控え目で家族中心の考えを持ち、2000年代から比の長者番付リストでトップを独走してきた男として。

 国内最大級の労組連合は、多数の雇用をつくり出したことから、彼は「永続の遺産」を残したと評価し、大統領府も「比経済の柱だった」とその死を悼んだ。多くの人が自分の努力によって富を築いた人物として愛情と憧れの気持ちで彼について語った。

 しかし一方で、死去を受けて、「近くセールがあるのだろうか」とか「俺たちで彼の富を分配できるのだろうか」という粗野な声も。批判者たちは共通して、彼が莫大な富を築いたのも、多くの労働者たちを低賃金や契約雇用で働かせてきたという、その待遇にあったと指摘している。シューマート・グループが1万1660人を正規雇用を決定したと発表したにもかかわらずだ。また、環境保護団体がシューマートがモール開発のために森林を伐採していると批判してきた経緯もある。

 彼の死は、資本家とはどういうものか、冨と善が共存できるのかという重要な議論を巻き起こした。シー氏は慈善家として知られていたが、慈善は正義の代役にはなりえない。貧富の差は厳然として存在し、シー氏が、もしくは少なくとも彼の築いた企業帝国がその差をさらに広げていると言える。私が願うのは、彼のような物語をフィリピン人の成功物語としてとらえるのをもうやめること。個人が富豪になることに憧れを抱くのではなく、公平で意義ある世界の構築が重要との意識を持ちたい。(21日・インクワイアラー、ケイ・リベラ)

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