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7月31日のまにら新聞から

演説は期待はずれ ドゥテルテ施政方針

[ 731字|2016.7.31|社会 (society)|新聞論調 ]

 ドゥテルテ大統領による最初の施政方針演説の原稿を初めて読んだアンダナー大統領府報道班長が思わず泣いてしまったという報道が出ていたので、私は心の準備をして演説を聴いたが、まったく期待外れだった。実際の演説で少し人々の感情に訴えた部分としては、巨大台風ヨランダの被災で多数の女性が夫を失い、多数の孤児が生まれたというくだりぐらいだった。また、演説時間は当初、38分の予定だと発表されていたが、実際には1時間半に及んだ。大統領による即興のアドリブが多く、側近も予想できなかったのだろう。

 大統領とスピーチライターは今回の演説に多くの情報を詰め込みすぎたようだ。無料Wifiやパスポート手続きなど別の機会に紹介すべきこまごまとした話題も多かった。大統領就任演説が素晴らしかっただけに、今回の施政方針演説の出来にはがっかりだ。

 また、施政方針演説では新しいニュースはほとんどなかった。これまでに各省庁などを通じて発表した政策を並べただけだった。唯一、初耳だったのは、フィリピン共産党の軍事部門、新人民軍(NPA)と一方的に停戦すると発表したくだりだった。

 大統領は演説で、違法薬物と犯罪を撲滅するために「自分の尊厳と人生、大統領職を懸ける」と強調した。ドゥテルテ氏の国を愛し、国のために尽くすという気持ちは本物だと思うが、どうやって国に仕えるのかが問題だ。彼は演説で「国を破壊する口実や盾として人権が使われるべきでない」とも述べた。独裁政権が好んで使う表現だ。今回の施政方針演説は記憶に残るフレーズもなく、読み違えも多く、本人も原稿を読み上げるのに苦労していた。就任演説で得た高評価を生かせず、無駄にした格好だ。(28日・ブレティン、レアンドロ・コロネル氏)

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