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5月18日のまにら新聞から

ハロハロ

[ 575字|2015.5.18|社会 (society)|ハロハロ ]

 一度見ておきたいと思いながら実現できていないのが「のぞきからくり」である。知ったのは寄席で聞いた落語から。昭和30年代、三遊亭百生という上方落語家が東京の定席に出ていて「天王寺詣り」を得意とした。この中で縁日風景を活写する。「のぞきからくり」の口上はその時、初めて聞いた。「箱の中の数枚の絵を口上とともに順次回転させ、景色や物語を凸レンズ付きのぞき穴から見せる装置」と大辞林に定義されている。

 口上が独特の節回しで面白い。「三府の一の東京の(あ、どっこい)波に漂うますらおの〜」で始まる「不如帰」(泉鏡花原作)がよく知られている。百生が演じたのは冒頭部だけ。しっかり聞けたのはのちに名画座で見た「長屋紳士録」(小津安二郎監督)の1シーン。占い師役の笠智衆が長屋の常会で一杯入った仲間にせがまれて演じるのである。

 実物が登場したのはこれも映画で「時代屋の女房」。夏目雅子が主演、渡瀬恒彦と津川雅彦がいい味を出している森崎東監督作品だ。この中で古物商の渡瀬が夏目と東北へ出物の「のぞきからくり」を仕入れに行く。小型トラックに積まれた実物が映っており、それでやっと形状が分かった。明治時代に発達し、戦前まで庶民に親しまれた縁日での娯楽だったようだが、今や地方の博物館に2、3点残るのみとか。体調回復したら展示場所に行ってみたい。(紀)

ハロハロ