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寺院復興に日本式修復を ネパール邦人専門家始動

[ 679字|2017.2.12|社会 (society)|アジア発 ]

 2015年の大地震で貴重な文化財が多数倒壊したネパールの考古局に、日本の文化財修復専門家が派遣され、1月上旬から寺院などの復興に乗り出した。和歌山県文化財センターの多井忠嗣さん(50)=休職中、大阪府出身。考古局への外国人派遣は極めて異例。「綿密に調査して、忠実に復元する日本式のノウハウを伝えたい」と意気込んでいる。

 激しい揺れに襲われたカトマンズの世界遺産、ダルバール広場(王宮広場)と周辺。全壊した17世紀建造の高さ約7メートルの「シバ寺院」を調べる多井さんがいた。ネパールの伝統建築は、木材で骨組みを作る日本の城郭建築と似ている。「木材やれんが計数万点を分析し、大工が残した目印などから、昔の組み立て手法を読み取る」という。

 多井さんは、和歌山県の熊野那智大社の災害復旧などでも活躍。地震後の15年11月、文化庁の調査でネパールを訪れ、実態に驚いた。「図面は未整備で、修理は職人の勘。数百年前の貴重な木材が補強材として別の場所に活用されていた」

 国際協力機構(JICA)の派遣で考古局の職員6人と取り組む今回の事業は、時代や材質ごとに詳細な復元図を作る日本式だ。旧王宮では米国や中国も修復支援中だが、ネパールへの技術伝達を主眼とするのは日本だけという。

 シバ寺院のほか、旧王宮の重要な塔「アガンチェン」も修復し、地震国日本の知見を生かし耐震補強も検討する。18年3月までの任期中に再建工事にかかれるかどうかも未定と息の長い作業だ。

 「鉄骨補強など安易なやり方をせずに、往事の姿に近づけたい」と多井さんは話した。(カトマンズ共同)

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