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9月25日のまにら新聞から

上院が担う役割 デリマ議員追放

[ 750字|2016.9.25|社会 (society)|新聞論調 ]

 あまりの突然のことに、わずかな予感を感じていた者ですら衝撃を覚えるほどだ。ダバオ市の元処刑団員と名乗る男性が証言をした上院司法人権委員会の聴聞会を終え、デリマ上院議員が直面したのは、同委員長職からの追放だった。

 デリマ議員は2009年のフィリピン人権委員長時代から、当時ダバオ市長だったドゥテルテ大統領による処刑団関与疑惑を追及していた。それ以来生じている、同議員と大統領の対立が異様な急展開を見せた。同議員追放に賛成した16人の上院議員は、大統領の指示ではないと強調したが、デリマ議員は背後に大統領がいることを疑わない。同議員を追放した議員らの主張では、上院の高潔さや調査の信頼性を守るためという。要は、大統領にとって厄介な存在を取り除き、なおかつ上院の野党勢力を減らすということが重要だったのだ。

 証言者の元処刑団員は今後、上院であら探しされることになる。しかし、皮肉なことにデリマ議員の追放は彼の証言を裏付けることになる。証言に矛盾や不審点が多いというなら、わざわざ同議員を彼から遠ざける必要はないからだ。

 同議員追放は、上院の多数派にも影を落とす。ピメンテル議長は議長選で、デリマ議員の委員長職を約束する代わりに同議員派閥の支持票を得た。同議員を追放すれば、それまで強固だった多数派に揺らぎが生じる。

 同議員追放後、ゴードン新委員長の下で再編された司法人権委は、果たして現政権の超法規的殺人を追及する聴聞会を続けるだろうか。国会は大統領に対抗する役割を担わなければならない。大統領就任からわずか2カ月半で3千もの人命が奪われたのだから、上院は事実を調査し、不快感を示し、図太く疑問を投げ掛けなければならない。例えそれが大統領の怒りを買うとしても。(21日・インクワイアラー)

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