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7月19日のまにら新聞から

決定より交渉が重要 仲裁裁判判断

[ 738字|2016.7.19|社会 (society)|新聞論調 ]

 南シナ海の領有権問題をめぐる仲裁裁判が、フィリピンに有利な判断を下そうが、関係諸国全体の利益を考慮した決定をしようが、明確なのは、判断に続く交渉が重要だということだ。

 判断が明らかになった数時間前、アベリャ大統領報道官は「最優先事項は国益」と言った。つまりドゥテルテ大統領と中国の習近平国家主席が進めている両国の緊密な交易関係強化は、仲裁裁の決定がどんなものだろうと妨げられないということだ。現政権は比にとって非常に重要なインフラや鉄道整備を中国に求めている。実現には両国間で多くの交渉を重ねなければならない。現政権が仲裁裁の判断にさほど関心を示さなかったのは、判断が国益に利さないと知っているからかもしれない。

 一方、米国や欧州諸国は間違いなく判断から利益を得る。欧米諸国は「国際法」を自国の利益誘導に利用するからだ。しかし、もしドゥテルテ政権が判断に重きを置かず、中国との協議を優先したら、仲裁裁の判断は欧米に対しても利益をもたらさなくなる。

 わが国の軍事力は非常に弱く、アジア圏で強大な経済と軍事力を誇る中国と戦う余裕はない。アキノ前政権は、「信頼できる防衛力」を得るため、国軍近代化に数十億ペソを投じた。しかし、現実は決して中国に対抗できるようなものではない。前大統領は、米国との同盟があれば、中国に太刀打ちできると思っていたのかもしれない。しかし、米中の間に挟まれたアヒル同然の比は破壊し尽くされてしまうだろう。

 前大統領は、米国との関係強化を受けて、中国が南シナ海の防衛力を強化するために岩礁の造成を進めるとは、思いもしなかった。ドゥテルテ大統領はそういった文脈を考慮して行動しているようだ。(13日・トリビューン、ニネズ・カチョ・オリバレス氏)

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